長門湯本温泉郷の再生を星野リゾートに託す

長門湯本温泉の夕景。温泉街を流れる音信川には6本の橋が架かり、それぞれライトアップされます(画像:星野リゾート)

後半は、JR西日本と星野リゾートがタッグを組んだ温泉街づくりの話題です。対象地は長門市の長門湯本温泉。開湯は室町時代の1427年と伝わる山口県最古の温泉郷で、最盛期の1980年代には年間40万人近い観光客が訪れました。

しかし、来訪者の多くは近隣の観光地・萩を訪れる団体客。団体から個人・グループへのシフトという観光の流れに乗り切れず、創業150年の名門旅館が廃業に追い込まれるなど、近年は不振に悩まされていました。

再生を託されたのが星野リゾートで、テレビコメンテーターでもおなじみの星野佳路代表が、自ら現地に足を運び「長門湯本温泉マスタープラン」を策定しました。星野代表が長門温泉に足りないと指摘したのは、「外湯」「食べ歩き」「文化体験」「回遊性」「絵になるシーン」「佇(たたず)みたくなる空間」の6項目です。

本サイトは観光系でないためポイントにとどめますが、温泉ホテルは、とかく食事、入湯、お土産ショッピングと観光のすべてを施設内で完結しがち。宿泊客が街に出歩かないと、温泉街の賑わいは戻らないというのが星野代表の持論です。

星野リゾートは、2020年3月に「星野リゾート界長門」を開業。新しい温泉旅館から、長門湯本温泉を再生します。

山陽新幹線乗り継ぎで長門湯本温泉に向かう観光列車「ゆずきち号」

山陽新幹線新山口駅と長門湯本温泉をつなぐ柑橘香る「ゆずきち号」。〝旅の途中から非日常〟がキャッチフレーズです(画像:星野リゾート)

星野リゾートが長門湯本温泉の再生に着手したのは2016年で、5年が経過しようとしています。2020年からのコロナ禍で、温泉地はおしなべて厳しい状況にあり、打開策が京阪神、そして首都圏から東海道・山陽新幹線と在来線を乗り継いで長門を訪れる、温泉客の利用を意識した観光列車です。

JR西日本と星野リゾート、それに地元の街づくり会社・長門湯本温泉まち(企業名)は2021年4月14日、誘客促進のための新しい取り組みを発表しました。

JR西日本が2021年6~9月に運行するのが、「柑橘(かんきつ)香る『ゆずきち号』」。観光列車「○○(まるまる)のはなし」を使って、山陽線新下関―山陰線長門市間を結びます。運転は6月15、17日、7月13、20日、9月8、29日の6日間。行きの車内では、萩市在住の陶芸家・金子司さんが製作したオリジナル萩焼の器でアフタヌーンティーを提供します。5種類の茶葉を選別・調合して作るオリジナルブレンドティーです。

帰路の車内では、阿川駅で飲食や地産品を販売するカフェに立ち寄り、地元業者が製造販売する柑橘類の「長門ゆずきち」を使用した菓子ボックスを提供。往復の車内でも、観光気分を満喫してもらいます。

旅行2社がツアー商品として販売

車内には長門ゆずきちや、山口産の夏みかんを加工したオリジナルオイルを置き、上品でさわやかな香りで旅の思い出を演出します。長門市関係者による見送り、記念乗車証の配布なども予定します。

ゆずきち号は、日本旅行と阪急交通社の旅行2社が長門湯本温泉の宿泊施設をセットした旅行商品・企画列車パッケージ商品として発売します。

星野リゾートはJR東海の「ずらし旅」ともコラボ

JR東海と星野リゾートがコラボする「ずらし旅」イメージ(画像:星野リゾート )

最後に、星野リゾートと鉄道事業者が協業するもう一つの動きをご案内。JR東海は2021年4月26日、同社が提唱する新しい旅の形「ずらし旅」で、星野リゾートとのコラボレーションを発表しました。

第1弾として、JR東海は星野リゾートが国内に5施設を展開するファミリー向け宿泊施設「リゾナーレ」とタイアップ。静岡県熱海市のリゾナーレ熱海などで、「平日に家族でずらし旅」キャンペーンなどを展開します。実際には、星野とグループの旅行会社・ジェイアール東海ツアーズとの連携策になるそうです。

文:上里夏生