農林水産業や商工業との連携で鉄道観光資源を磨き上げ

次の2件は、同じく国の事業になる「地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進事業」の地域鉄道モデルです。「磨き上げ」も観光庁が好んで使う言い回しで、鉄道事業者が地域の農林水産業や商工業とタッグを組み、製品やサービスを観光資源化する取り組みを表します。

フォーラムでは、茨城県のひたちなか海浜鉄道の「ほしいもカフェトレイン運行によるほしいもツーリズム」、熊本県のくま川鉄道の「人吉復興ツーリズム~レールがつなぐ人・文化・歴史、くま川鉄道沿線ストーリー」が報告されました。

海浜鉄道の延伸ルートをウォーキング

ひたちなか海浜鉄道のキハ205と、ほしいもスイーツ。国鉄タイプの気動車は岡山県の水島臨海鉄道から購入しました

ひたちなか海浜鉄道は、こちらも説明不要の地域鉄道。茨城交通湊線を三セクの海浜鉄道が引き継いで、2008年4月に営業開始しました。最近の話題では2021年1月、現在の終点の阿字ヶ浦から国営ひたち海浜公園西口付近までの、約3.1キロの路線延伸が国交省から認可を受けました。

ほしいもカフェトレインでは、列車内でケーキのような、ほしいもスイーツを味わいながら阿字ヶ浦へ。到着後は、ウォーキングイベントで海浜公園まで歩き、海浜鉄道延伸に思いをはせました。

後日談では、ツアーの模様をオンライン配信。今回はバーチャルだったツアー客にも、次回の来訪を促しました。

くま鉄の魅力を地元の高校生が語る

くま鉄のレールサイクルと新しい地域観光拠点「発船場人吉・球磨川」、球磨川を渡るくま鉄の列車

人吉復興ツーリズムは、2020年7月の球磨川はんらんで被災した熊本県の三セク鉄道・くま川鉄道(くま鉄)が舞台。くま鉄は現在、全線で運休中ですが、鉄道を忘れないでもらおうと、相良藩願成寺―川村で線路上を歩く「レールウォーク」のほか、軌道自転車で散策する「レールサイクル」のイベントを実施します。

地域住民との連携では、地元の高校生がくま鉄の魅力を語る「くま川鉄道沿線ストーリー」が話題。沿線では、球磨川くだり観光船の発着場が観光拠点「HASSENBA HITOYOSHI/KUMAGAWA(発船場人吉・球磨川)」にリニューアルされ、観光復活のシンボル的存在になっています。

後編では嵯峨野トロッコ列車などをご案内

ということで、前編はここまで。後編ではトークセッションから、トキ鉄、京都府の嵯峨野観光鉄道、青森県の津軽鉄道の観光振興策を紹介したいと思います。

後編の予告を少々。セッションのコーディネーターを務めた東京女子大学現代教養学部の矢ケ崎紀子教授は、「近距離やブロック内のマイクロツーリズムが増えているのが、最近の傾向。少人数、個人旅行、分散、戸外・自然などのキーワードに、観光復活のカギがある」と話していました。

本文では触れませんでしたが、国交省鉄道局の木村大鉄道事業課長のあいさつでは、スイスやイギリスの観光鉄道が写真で紹介されました

文:上里夏生
(画像は全て「地域鉄道フォーラム2021」の発表を筆者がキャプチャしたものです)